No Travel, No Life

旅の備忘録

【夏旅2010】第0日目

2010年の夏旅は北海道へ

2010年の梅雨も終わりかけの土曜日の朝、僕は伊丹空港へ向かうバスを待っていた。今回の夏の旅は、北海道・稚内を目指すことにした。ただ直接に稚内へ行くには面白みがないので、時間の許す限りあちらこちらを巡ってみようと考えた。したがって、この数ヶ月間、様々な資料を元に念入りに行程を仕上げていった。それに満足しながら、そして列車のチケットもそれなりに満足のいくものを準備して、ようやく出立となったわけである。

 

伊丹空港を飛び立ったANA501便は、明石海峡大橋を眼下に見ながら大阪湾の西側を抜けて、四国上空へと向かう。 

 

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 今回はプレミアムクラス利用だったので、機内で朝食を取る。朝粥が旨かった。

 

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徐々に眼下に雲が増えていき、着陸態勢に入るとその雲の中へと入っていく。まだ梅雨を引きずったような雨雲の中を抜けて着陸した。

 
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伊丹空港周辺は快晴であったが、宮崎の空はまだ雲に覆われており、小雨がぱらついていた。

 

稚内へ行くのにどうして宮崎なのか。稚内とはまるで逆方向ではないか。九州に行くというならわかる。しかし、目的地は北海道の北の果てにある稚内である。どういうことなのか。それは、今回の旅を日本縦断の旅にしたからだ。どうせなら、枕崎から稚内までの旅にしようと考えたのである。だとするなら、空路の場合そこは鹿児島空港ではないか。これも僕なりの理由があって、今回の旅は単に枕崎から稚内へ行ければいいというものではない。乗りたい路線、乗りたい列車に乗りながらの旅にしようと考えたのである。

 

そして、スタート地点の枕崎へ行くにしても、そこへ行くまでの過程も旅なのだから、本編が始まるまで、すなわち、プロローグとしての旅もまた乗りたいように乗ろうと考えたのである。そこで、JR九州が去年の10月から運行を開始したばかりの特急「海幸山幸」に乗って、それから鹿児島へ向かおうというわけであった。

 

少し寄り道して時間を潰す 
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宮崎空港駅


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宮崎空港から普通延岡行きに乗る。新型車である。JR九州でも宮崎支社管内の車両は旧国鉄時代からの古い車両が使われ続け、普通列車用としては新型車両が運転されることはなかった。が、時代は変わりつつあるのだと思った。電化ローカル線区の車両の世代交代を図るために817系がここ数年の間に投入されてきた。ついに宮崎にも運用ができたのである。


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僕は、宮崎空港駅で「宮崎空港から日向住吉まで」と「日向住吉から志布志まで」の乗車券を連続乗車券にして購入した。

 

宮崎駅を過ぎてさらに北上する。僕自身、宮崎県内の日豊本線を訪れたのは3年前の2007年以来だったので、久々に乗ってみようと思ったのである。

連続乗車券の第1券片の着駅である日向住吉を過ぎて高鍋で下車した。改札口で差額を払って外へと出る。高鍋駅は、かつて運行されていたドリームにちりん号(上り)の日付変更駅だったため、JR九州のフリーきっぷの開始をここ高鍋にした思い出がある。春先のまだ夜は冷える駅舎の中で一人寂しく列車を待ったが、夜行列車が減る一方の今ではそういう時間も得られ難くなった。


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高鍋駅からきっぷを買って、一つ宮崎寄りの佐土原駅へ行ってみる。佐土原は僕が小学生の頃まで「妻線」という国鉄線が分岐していた。改札を出ようとすると、白髪混じりの駅員が「どこから来たの」と気さくに声を掛けてくる。一見して僕が旅行者だとわかる風体だったからだろうが、僕もそれに応えてあれやこれやと世間話に興じた。


f:id:ps999earr:20180519181140j:image佐土原駅。ここからかつては妻線が分岐していた。


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佐土原からは10時14分発の特急にちりん1号で宮崎駅へ向かう。赤色をした国鉄形特急電車だ。自由席は空席があまり見られないほどの乗車率であった。


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宮崎に着くと、多少陽が射すようになっていた。階段を降りて改札口に行く。中央にきっぷ売場や売店が並ぶ通路があって、その左右に改札口が別れている。ホームごとに改札口が設置されている。この構造は、根室本線の帯広駅とよく似ている。

海幸山幸に乗る
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宮崎からは、お目当てにしていた特急「海幸山幸」に乗る。JR九州の車両デザインを手掛ける水戸岡鋭治さんによって「生まれ変わった」車両である。というのも、この海幸山幸用の車両は、元々は旧高千穂鉄道のトロッコ型観光列車として使われていた車両である。2003年に導入されてから台風被害で不通となる2005年までの僅かな期間しか運転されなかったこともあり、JR九州に売却・譲渡の上改造されたのであった。2003年に僕は一度高千穂鉄道時代に乗ったことがあった。実に7年ぶりの再会である。

海幸山幸は、木の温もりを感じさせる車両である。内装は、木目調の床や柱などが目立っている。その辺り、近年の水戸岡式なのだろうと思う。

宮崎を出てすぐに大淀川を渡る。雨水が泥と混じって濁流と化していたが、宮崎の空はすっかり青空が広がっていた。いよいよ梅雨明けだろうか。

南宮崎から日南線に入り、田吉で今朝宮崎空港から乗ってきた宮崎空港線と別れ、列車は日南海岸に沿って南下していく。とはいっても、少し内陸を行くので海は見えない。青島駅に到着した。

 

青島を出ると左手に海が見え始めた。今朝の梅雨空は過去のものとなり、すっかり夏空に変わってしまった。よしよし。


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アテンダントの女史が何やら箱を携えて僕の席までやって来た。くじ引きというので引いてみるとハズレであったが、飴をくれた。こういうアイデアで乗客を楽しませる演出も、思えばJR九州らしい。

日南の夏の海を堪能して大満足のうちに終点の南郷駅に到着した。

夏始まりました

次の志布志行きまで少し時間があるので、駅から少し歩いたところにある目井津漁港へと向かった。バスがありそうなのだが、徒歩でもさして時間を要しないからここは歩いて行くことにした。



f:id:ps999earr:20180521164155j:plainが、すっかり夏になってしまった目井津では陽射しがきつい。汗をタオルで拭いながら、時折水分の補給をして、15分ほどで到着した。そこでただ海を眺めて時間を潰す。地元の人にとっては日常の風景が、今の僕にとってはそれとは相対する対象になっている。日常には日常の、非日常には非日常のよさがある。僕は、その土地の人の感じている日常を味わいに来たのだと思った。


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南郷からは、13時52分発の快速日南マリーン号に乗った。愛称が付く列車は指定席車両が付いているというイメージを僕は持っているが、乗車した列車は単行の普通のディーゼルカーであり、全車自由席車であった。部活帰りの高校生らで賑やかである。


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日南の海沿いを走る。日南線には2002年の春に一度乗ったきりなので、あまり記憶に残っておらず、風光明媚な風景を眺められる路線なのだと改めて思ったのだった。列車は終着駅志布志に到着した。志布志は鹿児島県である。


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志布志無人駅であった。駅舎内に併設されている観光案内所に立ち寄り、何か記念になるものはないかと所望すると、木製の通行手形を模したものがあるという。それを一つ買っておく。

その観光案内所で垂水港行きのバス停を聞いて、やや早足で向かう。まだバスは来ていないようだった。時間の都合で鉄道記念公園に行けなかったのが悔やまれるが、次回への課題としよう。

バスで大隅半島を横断


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志布志駅上バス停から、大隅交通の垂水中央病院前行きのバスに乗る。これで垂水港まで行くことにする。串良、鹿屋と大隅半島を東から西へと横断していく。旧国鉄大隅線の代替ルートである。

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最前列の座席に腰を掛けたので、前方の景色がワイドに楽しめる。信号待ちのときに、運転手さんが「どこから来たの?」と気さくに話しかけてきた。それから信号待ちのときには「桜島が見えるよ」とかいろいろと教えてくれた。

鹿屋の市街地を抜けると左手に開けた土地が見える。海上自衛隊鹿屋航空基地と看板があり、こんな市街地に空港があるのかと思う。さらにそこを過ぎて、風景が田園のそれと変わると、左手に鹿屋体育大学が見えた。

大隅半島の西海岸へ出る。左手に海を見ながら、そして、時折桜島を前方に見ながらバスはゆっくりと進む。垂水港を知らせるアナウンスがあって、僕は降車ボタンを押す。降り際に運転手さんに「気をつけて」と声をかけられて、こちらも「ありがとうございます」と返した。

 

船にも乗ります。

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垂水港からはフェリーで鹿児島の鴨池港を目指す。旧大隅線の代替バス国分駅まで楽しみたかったが、今回は船でショートカットすることにした。

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そろそろ日も傾いてきた。

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フェリーが垂水港を出港すると、僕はデッキへと向かった。西に傾いた日がフェリーのブリッジの影になって暑すぎもせずで潮風が気持ちよかった。右手に桜島が見えた。いつもは日豊本線指宿枕崎線の車窓に映る桜島を見ていたので、南側から見る桜島はまた表情が違って見えて面白かった。山頂からは、白い噴煙が上がっていた。

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鴨池港からバスで交通局前へ移動する。バスから桜島が噴煙を上げているのが見えるが、それがこちらに迫ってきた。交通局前近くのタイヨーで水を買って暫し待つ。

きょうのおわりに

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18時43分、交通局前から、鹿児島交通のバスで枕崎へと向かう。列車で枕崎へ向かっても良いのだが、できるだけこれから通る経路は避けていきたい。これは、3年前の最長片道切符の旅のときと同様の思いである。今回の旅は枕崎から稚内へ行く。そのためにはまずはスタート地点の枕崎へと行かねばならない。枕崎へと行くルートはいくつかあるが、鹿児島から公共交通機関を利用するとなるとJR指宿枕崎線かバスかタクシーくらいしかない。自ずと一択となるわけであった。

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鹿児島市の市街地を抜けて峠を登っていく。左手の車窓には、眼下に鹿児島の市街地が見て取れるが、その奥に黄昏に染まる桜島が見えた。僕は、JR指宿枕崎線の坂之上あたりの勾配区間から見る桜島が好きだが、ここからの桜島も美しかった。

鹿児島は日本の中では比較的西に寄っているので、午後8時を回ったところであったがまだ西の稜線が白んじている。さすがに夏至から一月が経とうという時期だから日の入り時間も多少は早まっているはずである。僕の住む関西では午後8時にもなればすっかり暗くなってしまっている。

枕崎駅前へ着いたのは、午後8時半のこと。駅前のスーパータイヨーで夕食を調達し、ホテル岩戸まで歩く。海岸近くへ行くと鰹節のいい匂いがする。どうやら鰹節工場があるらしい。何とも枕崎らしい。さらに海岸まで行くと、夜空には無数の星々が一面に拡がっていた。水平線のすぐ上には蠍座が見えた。ああ、なんてきれいなんだろう。

ホテルに着いて温泉に入り、さっきスーパーで買っておいた惣菜で夕食とする。ガネがうまい。

 

きょうのまとめ

兵庫・川西(自宅)→大阪・伊丹空港宮崎空港高鍋→佐土原→宮崎→南郷(目井津漁港)→志布志→垂水→鹿児島(鴨池)→枕崎

  • 海幸山幸は良かった。
  • 志布志の鉄道記念公園は次回以降への課題。
  • 大隅代替バスはまた乗りたい。
  • 桜島、ダイナミック